盆栽をやるデメリット

 さてさてそんなに愉快な盆栽ですが、当然純粋に楽しいだけではない、やはり世の中は常に両価性でありしたがってデメリットももたらされます。

 まず一つは、長期の旅行に行けないことです。
 毎日水をあげなければいけない為、長期の旅行に行けません。「じゃあ、家人に頼めばいいじゃないか」という意見もありますが、盆栽野郎の家族は往々にして盆栽に興味なく、下手したら、大事なご主人を奪い、庭を狭くした盆栽を憎んでいる場合すらあります。
 他人に興味ないことを押し付けるのは、例えばあなたが友人の家に行き、そこで延々とその家主の子の運動会の動画を延々と見続けさせられる位罪深き事で、他人の心の痛みがわかるこれを読んでいる紳士淑女の皆さんならそのような業深き事はさせてはいけません。

 そしてこれが最大のデメリットなのですが、酒量がぐんぐん増えるということです。これはシャレにならない位に増えます。なにしろ自分の庭に常に花見のネタがゴロゴロしているわけですから。

 夏の夕刻、盆栽の手入れが終わり、夕涼みと称してとりあえずビールとか、寒い時期に梅の花が咲いたから、「ああ、春近し」などとぬかしてはとりあえず一杯とか、春に桜の花が咲いたので「ああ、新緑じゃ」などと言っては盃を干してみたり、あまつさえ、蕾がでただけで「これはいとめでたし!」などと宣い一杯、といった具合に酒飲みは後ろめたさを誤魔化すために、なにかと口実を作って酒を飲む輩でして、そんな酒飲みにとって酒を飲む口実が春夏秋冬、365日無限に作れてしまう悪魔の趣味なのであります。

 わたくしなんかも最近は、盆栽の手入れ後の余韻を楽しみたいのか、酒を飲む口実のために日々せっせせっせと盆栽を手入れしているのか、どっちがよく分からなくなってしまいました。
多分、最初は純粋に楽しみのためにやっていたはずですが、次第に目的と手段が入れ替わってしまいました。

 という訳でこれを読んでいる賢明な紳士淑女の皆様は大丈夫だと思いますが、ちょっと心当たりのある方はこの点を重々覚悟の上、手を出すのも出さないのも自己責任でお願いいたします。あ、でもこれをお読みの方でもしかしたらご主人に浮気の疑いのある方でしたらいいかもしれません。盆栽に手を出すと基本宅飲みになり外に飲みに行かなくなるので、ご家庭の平和と調和には寄与することでしょう。

私スナの趣味は盆栽でございます

と書くと自分でもオヤジくさい趣味だと思いますが、実際にガチのオヤジなのでしょうがないです。
 でも始めたのはほんの1年位なんですよ。それまでは結構真面目に仕事してきたため、気づいたら、趣味、酒オンリーとなってしまい、そうなってくるといい感じにアル中への道を爆走し、そうなると家族もいなくなっており気づいたら友人も酒オンリーとなっており、流石にそれは切なくなり、「なんて味気ない人生だ、なんか趣味持ちたい」と思い、そしたら頭に「盆栽とかよくね?枯れかけ、人生詰みかけのオヤジにはピッタリじゃん!」と突然思いつき、人間よりも長生きしてる盆栽とかもいっぱいあるし、残りの人生を一緒に年齢を重ねてくれる老木と共に生きるのもなかなか素敵だね!ってことで始めてみました。

 そもそも面倒くさがりの私が、庭の手入れが面倒くさいという理由で、極端に庭が狭い家を設計してしまい、そのためまだ50鉢位で、もう置く場所がなくなってしまいました。

 で、いざ始めてみると、これが意外に楽しかったりする。しばらく続けていると日々の植物の変化に気づきなんか可愛くなってくる。あと、思ったよりも手間がかかるのでいい時間潰しになる。
 あと盆栽を趣味にもったメリットは、交友関係が今までの接点がなかった人達と仲良くなる。
 私の師匠は御年80オーバーで、盆栽歴65年という、もう盆栽ゴッドみたいな人なんですけど(こういう人盆栽界ではよくいる)このようにぐっと交友関係の年齢層が上がる。そうすると私は小童みたいなもので、可愛がって貰える。

 盆栽好きな人達は基本めっちゃ優しい人が多く、また周囲から趣味を認めて貰えない人が多い。そりゃあ、自分の主人が毎日毎日、盆も暮れも木に針金まいたりハサミで切ったり、噴霧器で盛大に消毒ぶっ放してみたり、庭をエンドレスで鉢だらけにしてみたりすれば、なにかの呪いにかかったと思ってもそれはむしろ正当な判断でしょう。狂ったのはおそらくご主人のほうでしょう。
 だもんで、盆栽好き同士が知り合うと年齢性別を飛び越え一瞬で意気投合する。先出の師匠とも出会ったその日にお互いの庭を行き来する仲になった。ああ、こういうの学生以来。甘酸っぱい出会い♡

 それと、これまた意外にも若い女の子にウケがいい。キャバクラなんぞに行き「俺、趣味盆栽ぃ」なんて言うと食いついてくれる。「なんか植物を愛する人は優しい」とか「盆栽マンは余裕のある大人」とかっていうイメージがあるみたい。私、スナは財布も心も全然余裕ありませんが。財布はスカスカ、下心はギラギラって感じ。続きます。